社会人にとって、職場の上司に年賀状を送るときのマナーは重要な意味を持ちます。ビジネスの関係を良好にするために、年賀状はマナーを守って、より丁寧な書き方を心がけましょう。ここでは、知っておきたい年賀状のマナーと、上司への年賀状に使える文例をご紹介します。

「賀正・迎春」は失礼!?上司に年賀状を送る時のマナーをご紹介!

【1】上司への年賀状に使える冒頭の挨拶

年賀状の冒頭には、「賀詞」と呼ばれる新しい年を祝う言葉を書きます。年賀状を上司に出す場合、冒頭の挨拶文は敬意を示すために、「謹」や「恭」といった文字が入ったものを選ぶと失礼にあたりません。「謹」には「かしこまる」という意味が、「恭」には「うやうやしい」という意味がそれぞれ込められています。

冒頭に入れる挨拶文の例

  • ・「謹んで新年のお慶びを申し上げます」
  • ・「恭しく新春の寿ぎを申し上げます」
  • ・「謹賀新年」
  • ・「恭賀新年」

なお、上司が入院していたり、退職が決まっていたりする場合には、お祝いの表現を避けたほうが望ましいとされます。こういった場合には、次のようにお祝いの表現の代わりに「ご挨拶を申し上げます」と書けば失礼にあたりません。

お祝いの言葉を避けた挨拶文の例

  • ・「謹んで年始のご挨拶を申し上げます」
  • ・「恭しく新春のご挨拶を申し上げます」

年賀状の挨拶文では、このように相手の立場や状況に配慮した表現を選ぶように気を付けましょう。

【2】上司への年賀状の本文に使える例文とNGな表現

上司への年賀状では、挨拶文の次に昨年お世話になったお礼の言葉に加え、今年も変わらぬご支援をお願いする言葉を書きます。年賀状を出す上司との関係性によって、かしこまった表現と親しみを込めた表現を使い分けるといいでしょう。

元上司に使える かしこまった表現

  • ・「在職中はたいへんお世話になり ありがとうございました お陰様で就職も決まり 心改まる新年を迎えることができました」
  • ・「ご無沙汰しておりますが お変わりありませんか こちらはお陰様で家族一同元気に新年を迎えております」
  • ・「いかがお過ごしでしょうか お元気で幸多き一年になりますようお祈り申し上げます」

次に、上司との仲が良く、より親しみを込めた表現を使いたいという場合の例文もご紹介します。この場合も、あまりくだけた表現になりすぎないように適度な敬意を心がけましょう。

仲の良い上司に使える表現

  • ・「昨年は親身なご指導をくださり ありがとうございました まだまだ未熟者ですが ○○さんを見習いながら成長していきたいと思います」
  • ・「今年もより一層 仕事に邁進したいと思いますので ご指導頂けますよう よろしくお願い致します」

ご紹介してきたように、上司に対しては今年の仕事に対する意気込みを感じさせる言葉をそえるのが好印象を与えるコツです。

一方、年賀状に使うとかえって失礼となってしまうNGワードも存在します。たとえば、マイナスなイメージを連想する「別れる」「去る」「失う」などの忌み言葉を使用すると失礼にあたります。つい使ってしまいがちな「去年は」という表現は、「昨年は」「旧年中は」という書き方にするといいでしょう。

なお、前述の賀詞にも上司宛ての年賀状にはNGな表現があります。「謹」や「恭」が使われていない一文字、二文字の賀詞は目下の人向けとされ、上司には失礼となってしまいます。そのため、上司には「寿」や「賀正」「迎春」といった賀詞ではなく、「謹賀新年」のように四文字のものを用いるのです。

【3】上司への年賀状に添えたい気の利いた一言

実際に上司へ年賀状を出す場合には、挨拶などの文章があらかじめ印刷された年賀状を使用することが多いでしょう。しかし、それだけでは相手に事務的な印象を与えかねません。

そこで、最後に短くても気が利いた手書きメッセージを添えましょう。この一言によって、相手の印象に残りやすくすることができます。

手書きメッセージには、次のように上司とのエピソードや、今年の意気込みを書くと好印象です。

かしこまった表現

  • ・「今年は ○○課長から頂いたご指導を活かし 今まで以上に仕事に邁進する所存です」
  • ・「今年もより一層 業務に励むつもりでおります ご指導のほどよろしくお願い申し上げます」

仲の良い上司に使える表現

  • ・「○○の際は 貴重なアドバイスを頂き 誠にありがとうございました」
  • ・「○○さんに教えて頂いたことは 今でも私の心の支えとなっています」
  • ・「今年は私も部下を持つ立場となります ○○さんのように後輩の手本となれるよう努力します」

手書きでこのようなメッセージを添えると、印刷に比べて強調されて相手に伝わります。丁寧な文字で心を込めて書きましょう。

【4】上司への年賀状に宛名や住所を書く際のマナー

住所や宛名が書かれた表書きは、年賀状の中でも特に目立つ部分です。いつもお世話になっている上司に失礼がないように、書き方のマナーをしっかり押さえておきましょう。

「賀正・迎春」は失礼!?上司に年賀状を送る時のマナーをご紹介!

まず、基本的な書き方ですが、年賀状の表書きは縦書きするのがマナーとされています。友人同士であればあまり気にする必要はありませんが、目上の人である上司への年賀状は必ず縦書きにしましょう。また、住所の省略や略字は失礼にあたりますので避けましょう。

表書きは印刷にしてしまうと事務的な印象を与えるため、手書きするのが基本です。書く際に使うのは筆ペンが理想ですが、苦手な人は万年筆や水性ペン、ボールペンでも代用可能です。インクの色は黒にしましょう。ちなみに、赤いインクで名前を書くのは縁起が悪いとされており、失礼にあたりますので避けましょう。

次に、宛先住所の書き方ですが、前述のとおり都道府県なども略さずに書きます。番地の数字は漢数字が基本で、住所が長い場合はキリが良い所で改行しましょう。改行の後は、前の行の書き出しよりもやや下から書き始めるようにします。また、ビルやマンション名は住所よりも少し小さな字で書くと、バランスが良くなります。

そして、相手の名前はハガキの中央に、住所よりも大きな文字で書きます。名前に旧字体が使われている場合には、旧字体で正式な名前を書きましょう。名前のすぐ下には、忘れずに「様」をつけます。

「賀正・迎春」は失礼!?上司に年賀状を送る時のマナーをご紹介!

最後に、差出人の住所と氏名を左下の位置に、宛先の住所や氏名よりも小さな字で書きます。住所の書き出しの位置は、ハガキの半分より少し上から書くようにしましょう。なお、差出人の住所や氏名を裏面に記載する場合は、表面に記載する必要はありません。

【5】上司に年賀状の送り先住所を聞いてもいい?メールでの年賀状でもOK?

かつては会社から社員の住所録が配布されていた時代もありましたが、現在は個人情報保護の観点から社員名簿は非公開となっている会社がほとんどです。日頃お世話になっている上司に年賀状を出したいと思っても、相手の住所を知らないということも珍しくありません。

上司の住所を知るためには、本人に直接聞くことがマナーです。その際、年賀状を送るという目的を上司に知らせると、相手も安心して教えやすくなります。年賀状を出すことを相手にアピールしているようで恥ずかしいと思う人もいるかもしれませんが、部下から年賀状をもらって嫌な気持ちになる方は少ないものです。

ただし、万が一住所を聞いたときに「わざわざ送らなくていいよ」と言われた場合は、それ以上は聞かずに年賀状を送るのは諦めたほうがいいでしょう。また、社内の虚礼廃止を理由に年賀状のやり取りを禁止している会社では、年賀状のために住所を尋ねること自体がマイナスポイントとなってしまいかねません。事前に社内ルールを確認しておきましょう。

最近では環境保護の観点から、はがきではなく電子メールで年賀状を送る企業もあります。これについては人によって考え方が異なり、「電子メールの方が気軽で良い」と思う人もいれば、「メールで年賀状なんて失礼だ」と思う人もいます。上司が電子メールの年賀状に肯定的かが分からない場合は、住所を知っているのであればはがきで年賀状を送る方がいいでしょう。

電子メールで送る場合でも、ビジネスマナーをしっかりと守ることが大切です。絵文字など友人に送るような軽い表現を使ったり、一斉送信で年賀メールを送ったりすることは失礼にあたります。

まとめ

上司に年賀状を送る場合、自分と上司の関係性によって内容も少しずつ変わるものです。しかし、基本的なマナーは、どんな関係であっても欠かすことはできません。ご紹介した文例やマナーを参考に年賀状を送って、上司とのより良い関係を築きましょう。